■クリッピングマスクを使う(応用編)■
第3回で、簡単な図形に対してのクリッピングマスクの使い方について書きましたが、今回は、実際にキャラクタイラストをディズニー塗りで完成させます。
そもそも自分はペンタブというハイカラな道具をちゃんと持ってはいるのですが、あまり扱いになれてないので、全マウスでの操作ということで、
説明がなされてます(爆)
また、最初の方は第二回と被ってますが、とりあえず、おさらいと言うことで(^^;
【1】前準備
@下絵
スキャナーで取り込んだ画像→(必要であればサイズ拡大)
※赤い線が「レイヤー2」でトレースを始めてるところです。自分の描き始めは向かって左目です!(^^;)
下絵を用意します。下絵はトレースする際に何とでもなるので、あまり重要ではありません。ラフなもので問題ありません。
# とはいえ、丁寧に描けばそれだけ、トレースが楽です・・
#今回のこの下絵はスケブーに描いたもので、本能の赴くままに落書きレベルながら、かなり描き込んであります。イラレでこんな毛並みは再現できないといっても過言ではない(爆)
尚 、下絵をあまりにもこぢんまりと描きすぎて、スキャンした画像サイズがあまりにも小さいと、後の作業で困ったことになります。「ぼかし」を使用した際に、粗が目立つ(モザイクタイルのような効果になりますが・・)ってきますので、ある程度の大きさで下絵を用意します。
#自分は目安として、A4のキャンパスに余裕で入るくらいの大きさにしています。
#尚、Illustratorはベクトルデータなので、「ばかし」以外の効果は、サイズの変更に影響されませんので、トレースした後にトレースデータを拡大してやれば、問題ありません。
#言い換えれば、色塗り前までにサイズは決定しておくということです。
Aトレース
ペン先ツール、えんぴつツールを使用してトレース
※顔の部分までの途中経過です。
ペン先ツールやえんぴつツールを使用して、主線をトレースします。後で編集がしやすいようにパーツ単位で(線が重なって見えづらくても)丁寧にトレースします。
ここでパーツの上下関係も意識して、トレースしていくと後々の作業が楽になります。(後からでも簡単に変えられますが・・)
#とりあえず、毛並みの線もトレースしてみました。が、複雑過ぎて後で使われない線も出てくるはずです・・・
B色塗り(ベース)
トレースした主線を利用してパーツの「塗り」にベースの色を置いていきます。
この際 、先ほどトレースした主線は、別レイヤーに退避させておくと便利です。(実際の主線として利用したり、パーツ塗りを失敗した際に元に戻す作業が楽になります。保険ということで)
操作は、
「レイヤーのオプション」→「「×××(レイヤーの名前)」の複製」
で簡単に複製を作ることができます。(で、そのレイヤーは編集対象ではないので、すかさずロック!)
ベースの色塗り作業は、パーツを選択した状態で、「塗り」に好きな色を置くことで簡単にできるので、ひたすら、感性の赴くままに色を置いていきま〜す。
#ここで自分は、主線を別パーツとして扱うほうが楽なので、今扱っている塗り用のパーツはすべて主線を外しながらの作業になります。
☆『パーツの重ね順を変更する小技』
☆パーツの編集をしていると、パーツの重ね順が意図した通りにならずに、変更したい場合・・・(めんたまが顔パーツの後にいってしまったり・・)
☆
☆@パーツを選択して右クリック→「アレンジ」→「最前面へ」「前面へ」「背面へ」「最背面へ」で順番を変える
☆Aレイヤーウインドウを開いて対象のパーツのセルを移動させる
☆
☆で、できますが、これがけっこうめんどい・・
☆もっと機械的な方法で自分は、@Aと同じ結果が得られる方法を使ってます。こっちのが楽でっせ。(まぁ、いわゆるひとつの・・カット&ペーストなんですが・・)
☆
☆B変更したいパーツを選択→ctrl+x(カット)→基準にしたいパーツを選択→ctrl+f(で基準パーツの前面にカット時と同じ場所へペースト)又はctrl+b(で同じく背面へペースト)
☆
☆これでOK、簡単。※尚、いずれもデフォルトのキーマクロ設定の場合です。
☆
☆例えば、「顔パーツ」の上に「鼻パーツ」を乗せたい場合は、「鼻パーツ」をカットしてから「顔パーツ」を選択してからctrl+fで顔の前面に鼻がペーストされるちゅうことです。
☆ちなみにwindowのツールで一般的なペーストのマクロ「ctrl+v」のイラレでの動作は、「画面の中央の最前面にペースト」という機能になってます・・
☆イラレはキーマクロ命です。それを覚えて如何に作業時間を短縮するかが命題といったところです(大げさですが)
☆
☆以上小技でした
C色塗り(クリッピングマスク)
前述までが、今回の下準備みたいなものです。ここからがいよいよクリッピングマスクを使った画像処理の佳境に突入〜といったところです。
キャラクターの各部位、例えば、顔なら顔を構成してるパーツ郡、目なら目を構成しているパーツ郡・・といった具合にそれぞれをグループとして考え、
陰影やグラデーション効果をつけていきます。
・グループを作る(クリッピングマスクグループ)
目のパーツを例に説明を進めます。
目のベースとなるパーツ群を使って、クリッピングマスクのグループを作成します。
Illustratorでは、複数のパーツを選択して「クリッピングマスクの生成」を実行すると、最も前面にあるパーツが「クリッピングマスク領域に置き換わる」という動作をするので、
これを利用して、
「目パーツ(ベース)選択」→「コピー(ctrl+c)」→「同じ位置へ前面コピー(ctrl+f)」→「両パーツ選択」→「クリッピングマスク作成」
【複製作成】
両パーツを選択して、クリッピングマスクの作成
※ベースの画像の複製を作成したところ。同じパーツ(ここでは<パス>)が出来上がります。・・・表示されているサムネールは目の色が白なので見づらいですが(^^;)
でクリッピングマスクのグループが作成されます。簡単です。
あとあと、クリッピングマスクのグループが乱立してきて何がなんだかわからなくなってきますので、
自分でわかりやすい名前にしておくとなおよろし。(自分は慣れたので最近はそのままだったりしますが・・)
【グループ名をつける】
グループ名に「右目」という名前を設定
・陰影をつける
シャドウやライト用のパーツをぼかして「右目グループ」に対して、陰影をつけてやります。(詳しくは第三回参照してくだしぃ)
このぼかしパーツを右目グループ内の「クリッピングマスク領域」と「右目ベースパーツ」との間にサンド、挿入してあげます。(「間」ってもちろん順番ですよ)
このグループのクリッピングマスク領域の下に配置する限り、この領域内でのみ表示されるパーツになります。言葉で書くと難しいな・・
【陰影をつける】
右目グループに陰影をつけた状態
・クリッピングマスクを入れ子にする
これ大事!クリッピングマスク領域の中に新たにクリッピングマスク領域を追加することができます。
※上の絵を見ればわかりますが、瞳は目からはみ出した状態になってますが、これを瞳の中に入れ込んでやります!
方法は、同じ要領で作成した「瞳グループ」を「目グループ」の中に入れるだけでOK!カット&ペーストでも、マウスでグループ全体をドラック→移動でも可。
こうしておけば、このパーツ群全体を移動したり、同じ効果を共有したりするときに非常に便利です。
(もちろん同一グループ内に編入しなくても問題ないです・・この場合は瞳がはみ出すので必須ですよ)
【瞳グループを目グループ内に編入】
「顔グループ」の中に「目グループ」がネストして入っている状態
・瞳を描く(光の入れ方)
「イラストは目(瞳)が命」というくらい、瞳の編集には細心の注意を払います。
特に瞳の光の入れ方は作家さんごとにこだわりがあるもので、自分もそれなりのこだわりがあります。
目の各パーツは水晶体なので、表面の反射と黒目のまでの透明感を再現できる方法を苦心して作り込んでいます。
(リアルイラストじゃないのでそこまでこだわらなくてもいいのかも知れませんが^^;)
自分は単純に「ぼかし」を使うのではなく、「透過」を駆使して透明感を出しています。
【「ぼかし」で光を再現】
ぼかしを使用した場合
【「透過」で光を再現】
透過を使用した場合
微妙・・・・拡大だとどっちもどっちだな・・まぁ、気分の問題かもしれませんが、後者のほうが硬質で透き通った感じが再現できているような気がします(爆)
・透過のグラデーション?
上記で使用した透過の具体的な方法を説明します。
まずは、透過用のベース色が白のパーツを瞳の上におきます。(瞳の大きさにあわせて楕円のものを配置)
【透過の使い方1】
透過用のパーツを配置
次に、配置したパーツに対して、透過率を指定してやります。自分は、20%くらい。
後ろの瞳が透けて見えるようになります。(これだけだとまだ、しょぼい・・)
【不透明度の設定】
「透明度」→「透過率を指定」(自分が20%くらい)
透過を設定したパーツを複製して、同じ位置の前面に配置します。(ctrl+f)
そのパーツに対して「縮小」編集を実行してやります。自分は80%くらい。これを繰り返すことにより、中心に行くにつれて透過率が低い状態になる透過のグラデーション効果が得られます。
縮小率と透過率をもっと細かく指定してあげれば、もっと決めの細かいグラデーションが再現できますが、実際には、そこまでしなくても見た目にはわからない限界点があるので、いいあんばいで微調整するのがマル。
【透過の使い方2】
「複製作成」→「縮小」(縮小率、自分は80%くらい)
※ついでですが、瞳と黒目の部分はそれぞれ球状のグラデーションで表現(サンプル画は先にグラデーションを効かせっちゃってます)
より、球体に見えるようにこちらも努力します。
#描き手さんによって眼の書き方はいろいろりますね。眼の書き方でその人のこだわりがわかるような気がします。
#で、最近のはやりは、(特にアニメ系)瞳の下方に三角の光が入っているパターンが多いですね。
#真似っこがイラストの上達の道とはいえ、眼が同じだとみな同じ絵にみえますぞ。
・顔パーツ完成
同じ要領で全体のパーツをひたすら描き上げていきます。いや、はっきりいって絵を描いてる感覚ではないのですが、ちぎり絵感覚。
【顔パーツ】
顔全体の陰影付け完了
・身体全体パーツ完成(いちおう完成)
身体全体もひたすら上記の作業を繰り返す。
【身体全体完成】
体全体の陰影付け完了
※まわりの丸い物体はそういう絵ではなく、同じ「グラデーション」「ぼかし」を各パーツ間で共有するためのワークパーツとでもいうものです!スポイトで属性をコピペ!!
・主線の整理
上記までで、すでに完成しているとも言えなくもないですが、このあと当然、キャラオンリーでなければ背景を描かなければなりません。
また、キャラオンリーだとしても 主線の扱い方によっては、いろいろなタイプのイラストにすることができます。
以下おまけ
☆主線なし
画像準備中
主線を非表示
こういう境界線のあいまいなイラストでも味わいがあります。
この前段階のグラデーションをあまり多用しない状態のものでもIllustratorらしい絵になります。○○さんの絵なんかそう。
☆主線を強調
画像準備中
主線の線幅調整
企業のキャラクターなんかは塗りはともかく、主線が強調されてる場合がほとんどですね。
尚、自分は、線をペンタッチ(入りと抜き)風にするのがポリシー。
☆ディズニー
基本的に主線は目立たせず、それでいて輪郭がはっきりするような表現のことをそう呼んでます。
描き手さんによっては(特に惚れ惚れするほどうまい人)、主線なんて概念はなく、ペインター系のエアブラシの陰影だけで見事に書きあげてる方もいらっしゃいますが、ここは主線を使う場合の話ということで。
で、主線の色はキャラの色に対して陰影をつけた際の影の色に近い色を使う場合が多く、使う場所によって色を変える場合もあります。
影の部分が重なっている場合は、主線を明るい色にすると輪郭ははっきりします。が、それだと薄っぺらな表現になりがちなので、以下の方法で輪郭をはっきりさせます。
・輪郭の強調
主線を強調しないディズニー塗りの場合、隣り合ったパーツが明るい色同士だったり、暗い色同士(どちらかというとこちら)だったりすると、パーツ間の輪郭がはっきりしない状態になります。
そういった場合は、輪郭の部分に明るい色を配置してやります。
#実際にも美術の授業で習った記憶があります。<立体の一番くらい部分は輪郭部分ではないと・・
#だから、本来はそうするのが正しいのでしょうけど、全パーツに対してやっているとキリがないので、気になる部分だけ・・
画像準備中
輪郭に明るい色を配置
最終調整としていろいろ微調整をして完成ということになります。
画像準備中
最後に、このくらいの絵を描くのに述べ20時間くらいかかっています。ペインターだとどのくらいで描けるんでしょう???
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